12章 自由・安全・正直な場を創造する


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  • 東播磨カウンセリング研究会総会対談 2018.4.29
    「福祉の事例をこころと演技から理解する」

    劇作家・演出家     中原和樹
    東播磨カウンセリング研究会会長・心理カウンセラー いなまつゆか

    心理カウンセラーのいなまつゆかが、役者をしている娘を通じて知り合った、劇作家・演出家の中原和樹さんと対談をしました。

    中原さんは、箱庭療法に興味を持ってくださり、それを知ったいなまつが、東京に中原さんのワークショップを見学に行きました。その感性のすばらしさにうたれ、対談を希望したことから始まった企画です。



    中 人間に興味を持ち続けたり、僕らがやっぱり話すのは、演劇の場合、他の人の人生に、自分の感性を使って寄らないといけないので、

    自分自身の感性が閉じている状態だと、なかなか1回開かないと、寄りづらいんですよね。たとえば、ブレーキ、抑制したりとか、壁を作ったりっていう、感性の閉じ方も、やっぱりその人の人生次第だと思うので、

    すごい大変な作業なんですけど、1回この演劇の稽古場自体が一般の社会から切り離されて、安全である。

    い はあはあはあ。

    中 ま、傷つくかもしれないし、相手を傷つけるかもしれないけど、それでも勇気を持って、その自分の感性で、相手と向き合おうよっていう空間であるという認識をして、自分自身と向き合ってから、

    そういう作業をしていくっていうのは、社会と同じ延長線上にいると、そこに向き合えなくなったりもするんですよね。

    い なるほど。それはまさに一緒です。カウンセリングも、カウンセリングルームっていう部屋が完全に守られていて、たとえば、一般社会でね、話しすると、最初の、「お父ちゃんなんか、死んだらええのに」って言った日には、どうなることか。

    「怖い怖い」って言った人もいるんですよ、セリフをチラシに載せたら。「なんか、怖いこと言うてはる」っていう人もいたし、「悲しいよね」みたいな、

    中 ふんふん。

    い そうすると、なんか自由に出せない、そういうことをめったにやっぱり言えない、「パートナーが死んだらいい」、子育てしてて、「うちの子が死んだらいいのに、楽やのに」のに、てやっぱり言えないんですよね。

    でもそれをカウンセリングルームだったら、「ああそうなんですね」って、「そんなふうに、死んでしまったらいいって、思ってるんだ」っていう風に、ただ受け止めてもらえるっていう、それが安全。

    中 そうですね。

    い そういう場を作るってことですね。

    中 そうですそうです。

    い すごく似てますね。

    中 そうですね。

    い なんか嘘なんだけど、嘘じゃないのが、おもしろいですね。

    中 ああ、そうですね。1つ、1つだけ嘘というか。

    い うん。よけい、なんか自分が、出ませんか?

    中 ああ、出ますね。

    い 演劇、嘘の方が

    中 すごい出ますね。

    い 脚本も、すごく出ます?

    中 脚本も出ますね。やっぱり多分まあ、読む人が読んだらわかるっていう感じですけど、僕じゃない人の話でも、僕の人生がすごく反映されてしまって、すごく出ますね。隠せなくなって

    逆に言うと、隠し続けて書いたものって、魅力的じゃないっていうのもあるので、体裁で書くというか。

    い それこそ、安全圏にいると、

    中 そう!そうですね。建前とか体裁でやってる演技だったり、脚本だったりっていうのは、やっぱりちょっとどこか他人事、お客さんにとっても他人事になってしまう。共感されなかったり・・・

    い ・・本当のところですよね。正直な。

    中 そうですね。身を削られていくんですけど、

    い その辺は、カウンセラーしてても、身は削られていく気がしますね。

    中 そうですよね。

    い それを喜んでやっている、って何なんだろう(笑)って思いながら。なんか、それぐらいでないと、役に立たないんですよね。よく言うのは、毒にも薬にもならない。そのギリギリだっていうところは、もうギリギリ毒かもしれない。

    薬と毒ってこう、表裏一体な感じがあって、その中でやっぱり効くってなると、「これでうまいこといかへんかったら、カウンセラーやめなあかんかもしれへんで」みたいなところも含めてやるので、

    それぐらいの覚悟でやらないと、やっぱり「あなただけ楽して、自分をさらせって言うんですか?」みたいなことじゃないですか。

    中 うーん。

    い 相手の方は、こうやって、自分の中身をちょっとずつさらけ出していくのでね。そこにやっぱり、カウンセラーもある程度さらけ出さないと、ずるいってなるから。

    中 そうですね。

    い っていうような感じが、演劇でも多分、みんながそうやって、自分をむいて

    中 そうですね。

    い やらないと、

    中 本当に伝わらないですし、真実にならないですし。これも僕がよく話すのは、たとえば、この事例だったりとか、他の脚本もそうですけど、僕らがやる、この役よりも苦労してたり、つらい人って、世の中に本当に、ごまんといるわけで、

    その、もしかしたら全く同じ状況の人がいるかもしれない訳で、そういう人たちが仮に観たときに、失礼なんじゃないかって思うんですよね。

    い ああ。

    中 少なくとも、全く同じ気持ちにはなれないかもしれないけど、身を削って、そこに自分自身の人生を一生懸命さらけ出さないと、そういう他で生きている人たちに失礼じゃないかって、すごい思うんですね。

    い うん。

    中 なので、そこに行き着けないかもしれないけど、でも、さらけ出して、向かい続けるってことだけは、あきらめちゃいけないっていうことをやっぱり、思いますね。

    い すごい、言葉ですね。やっぱり、敬意もあるし、そういう皆さんに対してのね、支援をする上ですごく間違うのは、してあげる、みたいな、ちょっと上からになっちゃう。

    こちらは、やっぱり知識もあるし、経験もあるのだけど、そこでちょっとでもそうなっちゃうと、だめなんですよね。

    中 うんうん。

    い それは、同じように失礼なのかなって、思いますね。やっぱり、すごいなって私は思うんですよ。

    すごいしんどい思いをして、この方もそうだけど、「もうどうしたらええかわからへんわ」て、高齢だし、つらいのに、がんばって相談しに来られたわけでしょう。

    中 うんうん。

    い それ自体が、すごいことだってところから、私は始めようって思うんですね。

    中 うんうん。

    い そういうのって、まあ、一緒なのかなって。

    中 うん、そうですね。

    い それは、ロジャースっていう方が、現代のカウンセリングスタイルを生み出したといってもいい、アメリカの心理学者で、その方がすごく大事にしている三原則があるんですよね。

    まず、正直であること。

    中 うんうん。

    い 相手の方をありのままで受け入れることもすごく大事。

    それって、こうあるべきでしょってなったら、妻なんだからやりなさいよ、あなた専業主婦でしょ、それぐらいやりなさいよ、ではなく、そのまんまを受け入れる。

    中 うんうん。

    い 最後が、共感的理解なんですね。

    そういう3つの基本的態度を提唱した人なんですけど、私がロジャースが好きだなあって思うのは、誰とでも対等な感じ、上下がないんですね。

    お互いにすごく尊敬しあうっていう関係を、ロジャースはずっと大事にしてきたと思っていて、会ってもないんですけど(笑)、大好きなんですね。

    それが一緒だって思うんですよね。ロジャースはいつも正直だし、さらけだしてたんだろうと思います。

    もちろん、完璧な人はいないけど、完璧じゃないところも含めて正直でいたのかなと思うんですよね。そこも一緒ですね。




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    東播磨カウンセリング研究会 (岸本秀子方)
    e-mail  higashiharimac@gmail.com


       

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